2017年11月、新潟県の味噌屋より譲り受けた30石の大桶3本は現地で解体された。島根県の森田醤油店へと運ばれたのち、木材の状態で森田醤油店にて保管された。
翌年の2018年7月、森田醤油店にて木桶の仮組みの工程が始まった。
「結い物で繋ぐ会」にとっても30石の大きさの組み直しは初めての挑戦だ。
木材は味噌の塩分がしみこんでいるため、乾燥していても同じ大きさの新品の木材よりもかなり重量感がある。
巨大で重い側板に悪戦苦闘しながらも、30石の桶の側板は組みあがり、バラバラに分解された側板が立ち上がった。
いよいよ同年10月、森田醤油店での本箍(ほんたが)入れの作業が始まった。
とにかく木材が重い。底板は大人4人がかりでも持ちあがらない。
また、もともと底板が入っていたところから1cmでもずれると漏れるため、力をこめながらもミリ単位での繊細な調整が続いた。
竹を刈って本箍を編み、本箍、底板を入れる。最後に漏れがないかどうか確認した。
6日間の工程の後、大桶1本は立派に組みあがった。
昭和初期に新潟で作られた大桶が、島根にて息を吹き返した歴史的な瞬間である。
またそれは戦前まで行われていた組み直しの技術が、若い現代の桶職人達に確かに受け継がれていることを示す歴史的な意義を持つものだった。
島根県内で木桶の組み直しが行われたのは戦後初めての出来事と言われている。